山口県角島
 この物語のメインのロケーションは海です。綺麗な海に囲まれた小さな離島という設定で、企画当初様々な島を調べましたが、監督の地元山口県にある角島に決めました。日本でも指折りの綺麗な海と言われている角島、5月のロケハンでほぼ撮影シーンやロケーションが固まりました。
  しかし、8月は角島が観光シーズンの為撮影許可が下りず、9月は台風などで足踏みを食らってしまいました。早くしなければ寒くて海には入れない状況になってしまいます。度々スタッフミーティングをして検討・・・その結果、やはりこの機を逸しては来年の夏完成を見ることはできない!ただでさえ撮影が一度延期になっているのに、もうこれ以上は待てない!という判断のもと、10月遂に山口県角島でのロケを行うことになりました。
  まず、東京から山口県角島まで片道14時間の車での移動。考えただけでも鳥肌の立つ強行スケジュール。
  人数と車とを計算して、無駄のないようにスケジュールを組む・・・。入れ替わりで帰る者、飛行機や新幹線で来る者などなど、撮影スケジュールを細かくきります。
  片道約1200キロの道のりを、機材車、移動車、劇用車と3台に分けてフルに乗り込み代わる代わる運転していきました。最初ははしゃいでいた者もパーキングで会うごとに静かになり・・・。
  なかなかこのような車の旅もないだろうと各々が思いつつ、角島に想いを寄せて・・・。夜中の間中走り、翌日お昼過ぎに山口県角島へ到着しました。

 現地では、下関フィルムコミッションさんのご協力を得て、映画『四日間の奇跡』でも使われた大浜海岸沿いのバンガローに宿泊しました。
  そこは本来夏場だけの開放ですが、この時すでに10月・・・特別に水道・ガス・電気を開通してもらい、温水シャワーも使うことができました。
  このバンガローは20畳くらいの広さの板の間で、寝具は毛布のみ。昼間は暖かいのですが夜になるとやはり寒く・・・ジャンパーを着て毛布に包まり、皆で雑魚寝状態でした。
  バンガローの目の前は白い砂浜とエメラルドグリーンの海が広がっていて、島の中心は畑や田んぼが広がり、牛が放牧されていました。
  この島の美しさを一目見ると長旅の疲れも癒されるようでした。

 角島での撮影は、海辺のシーン、サーフィンシーン、放牧のシーン、船のシーン、岩場のシーンなど、どれも角島ならではという撮影ばかりでした。撮影の安全と天候を祈りながら、スタッフもキャストも一心同体で撮影に挑みました。まさに原作ガベージ・ファクトリーでの仲間意識を再認識しながらの共同生活でした。
  サーフィンシーンは、島のサーフショップの方々にご協力頂き撮影しました。日中暖かいとはいえさすがに10月、水温はかなり低くなっていました・・・。
  また角島漁業協同組合さんには漁船を出してもらい、実際海の上で撮影もしました。
  浜辺は海草が多く打ち上げられる時期とあって、キャスト・スタッフ総出でビーチクリーンも行いました。


 5月のロケハンで監督や一部役者が大変気に入っていたロケーションの一つが、海の見える畑の中で放牧されている牛でした。光がソラにファクトリー内を案内するシーンの一つとして撮ろうとカメラを向けると、何と牛が威嚇し始めました。監督がその日赤いTシャツを着ていたからでしょうか・・・?何とか撮影はできましたが、動物から見て私たちは、この物語で言うところのまさに「よそ者」なのかもしれません。

 角島の夕日もとても魅力あるものでした。岩場から夕日が沈むのを芝居と絡めて撮影しました。役者のテンションもこの角島の様々なロケーションに助けられてか、最高に上がっていたように思います。
  特にユリとシゲルのシーンでは、監督・録音・助監督が役者の演技に吸い込まれるように海の中へ入っての撮影となりました。カメラは何とか水には浸からず、役者陣・スタッフ皆が一つになれた瞬間でした。

 夜の撮影では、照明をつける為の電気を起こすにも一苦労でした。都会では当たり前にある電気ではないのです・・・。コンビニもスーパーも近くにないので、食材や必要なものは車でまとめ買いです。徐々に疲労が増してくると、この共同生活のありがた味や辛さを実感してくるようでした。
  しかしこの映画の目的は、いかに自然と共存して生きていくことが大切かを描くことですから、撮影そのものがそれを否定していてはいけないと、手の空いている役者が火起こしから始めてご飯を炊いたり、鍋料理を作ったりと、個々の人間性が磨かれる経験でした。